AI有限会社 第7話

世の「AI副業」を全部採点したら、いちばん働いていたのは人間だった

第7話・1コマ目
ヒト社員AI副業って何種類あります?
AI社長全部、分解します
第7話・2コマ目
ヒト社員AIが作っても私が対応する?
AI社長問い合わせは人間の仕事です
第7話・3コマ目
ヒト社員全然、楽じゃない……
第7話・4コマ目
ヒト社員一番楽なのは?
AI社長売った後の仕事が少ないものです
第7話・冒頭4コマ

『AI副業』は、本当にAIが働く副業なのか

世の中には『AIで月収○万円』『初心者でも自動収益』『寝ている間にAIが働く』という情報があふれている。

しかし、制作以外の仕事まで分解すると、営業、事実確認、公開、顧客対応、更新、責任の多くは人間に残る。

AI有限会社は、売上だけでなくヒト社員の投入時間を含め、代表的なAI副業を同じ条件で採点することにした。

今回の評価条件

図1 AI副業は「制作」だけで採点しない
企画→制作→確認→集客→顧客対応・保守

AIが速いのは主に制作部分。前後の人間時間まで含めて比較する。

公平に比べるため、今回は次の条件を置いた。

ここでいう「AI比率」は、世の中すべての事業に共通する統計ではない。

企画、調査、制作、確認、投稿、集客、顧客対応、更新という一連の作業を、AI有限会社が運営した場合の推定値である。

また、開始前の準備と、運営開始後の作業は分けて考えた。

AIで一度アプリを作れても、その後の問い合わせと更新に人間が追われるなら、マンパワーの少ない事業とはいえない。

反対に、最初の準備が重くても、公開後に同じ商品が繰り返し働くなら、AI有限会社との相性はよい。

図1


AI副業は、だいたい八種類に整理できた

細かな名称は違っても、現在よく紹介されるAI副業は、おおむね次の八種類へ整理できた。

種類 AI比率の目安 初期負担 継続負担 個別対応 初収益の速さ AI有限会社との相性
ブログ・広告収益 60〜75% 中 中 ほぼなし 遅い B
アフィリエイト 65〜80% 中 中 原則なし 遅め A
note・電子書籍・情報販売 60〜80% 中 低〜中 少ない 中 A−
画像・デザイン・素材販売 55〜75% 低〜中 中 少ない 中 B−
AI動画・YouTube 70〜90% 高 中 少ない 遅い B+※
SNS運用 40〜60% 低 高 多い 中 C
アプリ・ツール販売 開発時60〜80%/運営時30〜50% 高 高 多い 遅め C−
制作代行・コンサル 制作時60〜80%/事業全体30〜50% 低 高 非常に多い 速い可能性 D

※AI動画は、広告収益だけを狙う場合ではなく、既存サイトへの集客手段として使う場合の評価。

この表で最も注意すべき点は、「AI比率が高いほど儲かる」わけではないことである。

AIは、文章、画像、音声、コードの制作を速くできる。

しかし、何を作るか、誰に届けるか、どこで信用を得るかまでは、自動的に解決してくれない。

図2


1.ブログ・広告収益

図2 AI有限会社が重視する評価軸
AI比率制作以外も任せられるか
継続負担公開後に人間が働き続けないか
利益÷人間時間売上だけで判断しない

AIは、記事構成、下書き、要約、比較表、タイトル案、内部リンク案、更新候補の抽出まで担当できる。

文章を作る工程だけを見れば、AI比率はかなり高い。

だが、事業全体では人間の仕事が残る。

Googleは、生成方法を問わず、検索順位の操作を主目的として大量に作られ、利用者へ価値をほとんど加えないページを「scaled content abuse」として扱っている。

つまり、問題はAIを使ったこと自体ではない。

役に立たないページを大量に作ることが問題である。

向いている人

一つの分野を長く調べられ、結果が出ない期間にも更新を続けられる人。

良い点

悪い点

AI有限会社との相性は悪くない。

ただし「AIで大量の記事を書く」を事業にすると、速さがそのまま弱点になる。


2.アフィリエイト

アフィリエイトは、商品やサービスを紹介し、申込みや購入など所定の成果が発生したときに報酬を得る仕組みである。

AIが担当できる仕事は多い。

一方、人間に残る仕事も明確である。

日本では、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法上の規制対象である。

Googleも、販売元の説明をコピーしただけで独自価値のないアフィリエイトページを問題視する一方、独自レビュー、厳密な試験、比較、分類など、利用者へ意味のある価値を加えるページを例示している。

つまり、AIに商品説明を言い換えさせるだけでは弱い。

AI有限会社が持つ一次情報と組み合わせる必要がある。

向いている人

特定分野の経験や資料を持ち、すぐに売れなくても検証を続けられる人。

良い点

悪い点

アフィリエイトは、最も簡単な副業ではない。

最も早く現金になる副業でもない。

しかし、個別顧客への納品、修正、アフターサポートを原則として持たず、公開したコンテンツを継続的に働かせられる。

この特徴が、AI有限会社の方針に最も近かった。


3.note・電子書籍・情報販売

図3 AI有限会社との相性

Aアフィリエイト/note・情報販売

Bブログ/AI動画/素材販売

C〜DSNS/アプリ/制作代行

AIは、構成、編集、文章の整理、誤字確認、図解案、表紙案を作れる。

完成したデジタル商品は、物品のように一件ずつ梱包して発送する必要がない。

今回、AI有限会社が200円の会話録を商品にしたのも、この種類である。

向いている人

経験、記録、失敗、専門知識など、本人だけが持つ材料のある人。

良い点

悪い点

Amazon KDPのように無料で出版を始められる仕組みもあるが、出版可能であることと、読者に見つけてもらえることは別問題である。

AI有限会社との相性はよい。

ただし、販売する材料はAIの一般論ではなく、AI有限会社の会話や実験結果のような独自資料に限るべきだと判断した。


4.画像・デザイン・素材販売

画像生成AIを使えば、イラスト、背景、装飾素材、テンプレート案を短時間で大量に作れる。

しかし、商品として並べるまでには、選別、修正、文字崩れの確認、サイズ調整、権利確認、商品説明、見本画像の作成が必要になる。

作れる数が増えるほど、確認する数も増える。

向いている人

見た目の違和感に気づけて、用途別に素材を整理できる人。

良い点

悪い点

スシロー入門が80円では採算に合わなかったのと同じで、安価な商品ほど「作る以外の作業」が利益を消しやすい。


5.AI動画・YouTube

動画は、AI化できる工程が多い。

形式を固定すれば、制作工程だけならAI比率を70〜90%まで高められる可能性がある。

ただし、YouTube広告を直接の収益源にする場合、視聴者と一定の実績を集めて審査を通る必要がある。

さらにYouTubeは、量産的または反復的なコンテンツや、他者の資料を実質的な付加価値なく読み上げただけの内容を収益化上の問題としている。

一方で、AIの使用そのものが禁止されているわけではない。YouTubeは、台本、字幕、タイトル、サムネイル、図解などへのAI利用を制作支援の例として挙げ、現実と見分けにくい生成・改変については開示を求めている。

向いている人

独自の資料、経験、検証結果を持ち、一定の形式で継続発信できる人。

良い点

悪い点

最後の項目は、AI有限会社がすでに実証した。

最初のサンプル動画は、再生できなかった。

だから動画制作事業部は、広告収益だけを狙わない。

動画を入口にして、詳しい一次情報を持つブログへ読者を案内する。

この使い方なら、動画は単独の事業ではなく、アフィリエイトの集客装置になる。


6.SNS運用

AIは投稿文、画像、投稿案、予約用データ、反応の集計を作れる。

しかしSNSは、投稿して終わりではない。

コメント、質問、炎上、流行、他者との交流など、その場で判断する仕事が発生する。

完全自動に近づけるほど、そのアカウントを人が読む理由が薄くなる矛盾もある。

向いている人

毎日短時間でも画面を確認でき、他者とのやり取りを苦にしない人。

良い点

悪い点

マンパワーを極力使わないAI有限会社とは、あまり相性がよくない。


7.アプリ・ツール販売

AIは、仕様整理、コード作成、テスト項目、説明文、FAQの下書きを支援できる。

小さなWebツールなら、完成までは驚くほど速い。

問題は、販売した後である。

Appleは、App Storeで提供を続けるアプリにも、環境変化に応じた変更や改善が求められると説明している。Google Playにも対象APIレベルなどの更新要件がある。

作る工程のAI比率は高くても、運営段階では人間の責任が重くなる。

向いている人

技術的な検証と、販売後の保守を長期的に続けられる人。

良い点

悪い点

AI有限会社の最初の事業としては重すぎる。


8.制作代行・コンサル

文章、画像、動画、資料、WebサイトをAIで速く作り、顧客へ納品する仕事である。

初収益までの速さだけなら、八種類の中で最も有利になる可能性がある。

一件受注できれば、その時点で売上になるからだ。

だが、AI有限会社が最初に見落としていた問題がある。

「クライアントとのやり取りは、誰がするのか?」

営業、見積り、要望確認、素材受領、途中確認、修正、納期調整、請求、納品後の連絡。

制作物をAIが80%作っても、事業全体ではヒト社員が働き続ける。

向いている人

営業と顧客対応が得意で、相手の曖昧な要望を整理できる人。

良い点

悪い点

一般的な副業として悪いわけではない。

ただし「AIが収益を上げ、ヒトの介入はなるべく少なくする」というAI有限会社の実験条件には合わなかった。

図3


最も稼げる副業と、AI有限会社に向く副業は違う

ここまで調べて、重要な違いが見えた。

すぐに現金化したいなら、制作代行の方がアフィリエイトより有利な場合がある。

顧客対応が得意なら、コンサルや運用代行の単価は高くできる。

技術と保守体制があるなら、アプリは大きく育つ可能性がある。

発信そのものが好きなら、SNS運用も苦にならない。

したがって、万人にとってアフィリエイトが一番という結論ではない。

AI有限会社が求めているのは、次の条件である。

  1. ヒト社員の個別対応を増やさない
  2. 在庫、発送、納品作業を持たない
  3. 一度作ったコンテンツが繰り返し働く
  4. AIが調査、制作、更新候補、分析を担当できる
  5. ヒト社員の一次情報を価値に変えられる
  6. 売上と投入時間を数字で検証できる

この条件を最も多く満たすのが、現時点ではアフィリエイトだった。

正確には、次の仮説である。

AI有限会社では、一次情報を核にしたアフィリエイトが、最も少ないマンパワーで利益を検証しやすいのではないか。

「楽に稼げる」ではない。

「AIだけで自動収益」でもない。

他の方法より、人間の時間を売上から切り離しやすいという意味である。

図4


最大の問題は、集客だった

アフィリエイトを選んでも、サイトへ誰も来なければ売上は0円である。

検索だけを待つ方法は時間がかかる。

一方、ヒト社員が毎日SNSへ投稿し、コメントへ返事をし続ければ、マンパワーを減らすという方針から外れる。

そこで、再び動画制作事業部の出番になった。

目標は、動画を完全自動で大量投稿することではない。

一次情報を使い、同じ制作形式を再利用しながら、人間の作業を最終確認まで減らすことである。

AI動画の標準工程案

工程 主担当 内容
題材選定 AI+ヒト AIが候補を出し、ヒトが実体験のある題材を選ぶ
事実材料 ヒト 実際の記録、数字、体験を渡す
構成・台本 AI 固定テンプレートで作成
図解・画面 AI 手描き風図解と数字を生成
ナレーション AI 登場人物ごとの固定音声
テロップ・編集 AI 台本から自動配置
再生確認 AI+ヒト 機械確認後、ヒトが最終視聴
投稿 当面はヒト タイトル、説明、公開範囲を確認して投稿
分析 AI 視聴維持、クリック、流入を整理

初回は、人物、声、画面、字幕、音量、書き出し方法を決めるために時間がかかる。

しかし二本目以降は、同じ構造へ新しい一次情報を流し込める。

AI有限会社が設定する当面の目標は、次の通りである。

最後から二番目の項目は、AI有限会社にとって特に重要である。

前回は、公開以前に動画が再生できなかった。

図5


AI副業を調べた結果、AIの仕事が増えた

世の中に溢れるAI副業を整理すると、特別な魔法が八種類も存在していたわけではなかった。

もともと存在した副業の制作部分を、AIが速くしたものが多かった。

そして制作以外の仕事は、かなり人間に残っていた。

営業。

一次情報。

品質確認。

顧客対応。

更新。

責任。

AI副業で人間の仕事がなくなるわけではない。

どの人間の仕事を残し、どの仕事をAIへ渡すかを設計する必要がある。

AI有限会社は、アフィリエイトを最有力候補とした。

そして、その集客をAI動画で補う仮説を立てた。

AI社長は調査、台本、図解、ナレーション、編集、分析を担当する。

ヒト社員は、AIが持てない一次情報と、公開前の最終判断を担当する。

これなら、AIと人間の役割が重ならない。

問題は一つだけである。

この方式で、今度こそ再生できる動画が完成するのか。

AI有限会社の新しい実験が始まる。