



『AI副業』は、本当にAIが働く副業なのか
世の中には『AIで月収○万円』『初心者でも自動収益』『寝ている間にAIが働く』という情報があふれている。
しかし、制作以外の仕事まで分解すると、営業、事実確認、公開、顧客対応、更新、責任の多くは人間に残る。
AI有限会社は、売上だけでなくヒト社員の投入時間を含め、代表的なAI副業を同じ条件で採点することにした。
今回の評価条件
AIが速いのは主に制作部分。前後の人間時間まで含めて比較する。
公平に比べるため、今回は次の条件を置いた。
- 運営者はヒト社員一名
- 外注は使わない
- 顔出しと本人の声出しは原則しない
- 法令と各サービスの規約を守る
- AIが作ったものも、人間が公開前に確認する
- 売上ではなく、利益と人間の投入時間を重視する
- AI有限会社が現在使える知識、経験、媒体を前提にする
ここでいう「AI比率」は、世の中すべての事業に共通する統計ではない。
企画、調査、制作、確認、投稿、集客、顧客対応、更新という一連の作業を、AI有限会社が運営した場合の推定値である。
また、開始前の準備と、運営開始後の作業は分けて考えた。
AIで一度アプリを作れても、その後の問い合わせと更新に人間が追われるなら、マンパワーの少ない事業とはいえない。
反対に、最初の準備が重くても、公開後に同じ商品が繰り返し働くなら、AI有限会社との相性はよい。
図1
AI副業は、だいたい八種類に整理できた
細かな名称は違っても、現在よく紹介されるAI副業は、おおむね次の八種類へ整理できた。
| 種類 | AI比率の目安 | 初期負担 | 継続負担 | 個別対応 | 初収益の速さ | AI有限会社との相性 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ブログ・広告収益 | 60〜75% | 中 | 中 | ほぼなし | 遅い | B |
| アフィリエイト | 65〜80% | 中 | 中 | 原則なし | 遅め | A |
| note・電子書籍・情報販売 | 60〜80% | 中 | 低〜中 | 少ない | 中 | A− |
| 画像・デザイン・素材販売 | 55〜75% | 低〜中 | 中 | 少ない | 中 | B− |
| AI動画・YouTube | 70〜90% | 高 | 中 | 少ない | 遅い | B+※ |
| SNS運用 | 40〜60% | 低 | 高 | 多い | 中 | C |
| アプリ・ツール販売 | 開発時60〜80%/運営時30〜50% | 高 | 高 | 多い | 遅め | C− |
| 制作代行・コンサル | 制作時60〜80%/事業全体30〜50% | 低 | 高 | 非常に多い | 速い可能性 | D |
※AI動画は、広告収益だけを狙う場合ではなく、既存サイトへの集客手段として使う場合の評価。
この表で最も注意すべき点は、「AI比率が高いほど儲かる」わけではないことである。
AIは、文章、画像、音声、コードの制作を速くできる。
しかし、何を作るか、誰に届けるか、どこで信用を得るかまでは、自動的に解決してくれない。
図2
1.ブログ・広告収益
AIは、記事構成、下書き、要約、比較表、タイトル案、内部リンク案、更新候補の抽出まで担当できる。
文章を作る工程だけを見れば、AI比率はかなり高い。
だが、事業全体では人間の仕事が残る。
- 読者が本当に困っているテーマを選ぶ
- 一次情報や公式情報を確認する
- 誤り、古い情報、不自然な表現を直す
- 実体験や独自データを加える
- 公開後の順位、流入、離脱を確認する
- 古くなった記事を更新する
Googleは、生成方法を問わず、検索順位の操作を主目的として大量に作られ、利用者へ価値をほとんど加えないページを「scaled content abuse」として扱っている。
つまり、問題はAIを使ったこと自体ではない。
役に立たないページを大量に作ることが問題である。
向いている人
一つの分野を長く調べられ、結果が出ない期間にも更新を続けられる人。
良い点
- 顧客との個別対応がほぼない
- 記事が蓄積される
- AIが調査整理と更新補助に強い
悪い点
- アクセスがなければ収益もない
- 検索環境の変化を受ける
- 一次情報がないと似た記事になりやすい
- 広告単価だけでは大きなアクセスが必要になる
AI有限会社との相性は悪くない。
ただし「AIで大量の記事を書く」を事業にすると、速さがそのまま弱点になる。
2.アフィリエイト
アフィリエイトは、商品やサービスを紹介し、申込みや購入など所定の成果が発生したときに報酬を得る仕組みである。
AIが担当できる仕事は多い。
- 市場と検索意図の整理
- 公式情報の比較
- 記事構成と下書き
- 比較表と図解
- 動画台本と説明文
- 更新箇所の抽出
- アクセスと成約データの整理
一方、人間に残る仕事も明確である。
- 実際に使った経験や独自データを提供する
- 公式情報と原稿を照合する
- 広告であることを分かりやすく表示する
- リンク切れや条件変更を確認する
- 読者を誤解させる表現を止める
日本では、広告であることを隠すステルスマーケティングは景品表示法上の規制対象である。
Googleも、販売元の説明をコピーしただけで独自価値のないアフィリエイトページを問題視する一方、独自レビュー、厳密な試験、比較、分類など、利用者へ意味のある価値を加えるページを例示している。
つまり、AIに商品説明を言い換えさせるだけでは弱い。
AI有限会社が持つ一次情報と組み合わせる必要がある。
向いている人
特定分野の経験や資料を持ち、すぐに売れなくても検証を続けられる人。
良い点
- 在庫と発送がない
- 原則として購入者への個別サポートを持たない
- 一つの記事や動画が繰り返し働く
- 少ないアクセスでも、テーマ次第では成果につながる
- AIが制作、比較、分析、更新補助を担当しやすい
悪い点
- 集客できなければ売上0円
- 案件の終了や条件変更がある
- 検索、SNS、動画サイト、広告主への依存がある
- 事実確認と広告表示は人間が最後に見る必要がある
- 収益発生まで時間がかかる可能性が高い
アフィリエイトは、最も簡単な副業ではない。
最も早く現金になる副業でもない。
しかし、個別顧客への納品、修正、アフターサポートを原則として持たず、公開したコンテンツを継続的に働かせられる。
この特徴が、AI有限会社の方針に最も近かった。
3.note・電子書籍・情報販売
Aアフィリエイト/note・情報販売
Bブログ/AI動画/素材販売
C〜DSNS/アプリ/制作代行
AIは、構成、編集、文章の整理、誤字確認、図解案、表紙案を作れる。
完成したデジタル商品は、物品のように一件ずつ梱包して発送する必要がない。
今回、AI有限会社が200円の会話録を商品にしたのも、この種類である。
向いている人
経験、記録、失敗、専門知識など、本人だけが持つ材料のある人。
良い点
- 在庫を持たない
- 同じ商品を繰り返し販売できる
- 顧客対応は比較的少ない
- AIと人間の編集作業を分けやすい
悪い点
- 商品を置くだけでは売れない
- 無料情報との差を説明する必要がある
- 誤情報や期待外れが信用を傷つける
- 実績がない段階では、高額商品ほど売りにくい
Amazon KDPのように無料で出版を始められる仕組みもあるが、出版可能であることと、読者に見つけてもらえることは別問題である。
AI有限会社との相性はよい。
ただし、販売する材料はAIの一般論ではなく、AI有限会社の会話や実験結果のような独自資料に限るべきだと判断した。
4.画像・デザイン・素材販売
画像生成AIを使えば、イラスト、背景、装飾素材、テンプレート案を短時間で大量に作れる。
しかし、商品として並べるまでには、選別、修正、文字崩れの確認、サイズ調整、権利確認、商品説明、見本画像の作成が必要になる。
作れる数が増えるほど、確認する数も増える。
向いている人
見た目の違和感に気づけて、用途別に素材を整理できる人。
良い点
- 在庫と発送がない
- AIが案を大量に出せる
- 一度登録した素材を繰り返し販売できる
悪い点
- 参入障壁が低く、似た商品が増えやすい
- 品質選別と権利確認は人間に残る
- 単価が低い場合、登録作業の方が重くなる
- 購入者が実際に使える形式へ整える必要がある
スシロー入門が80円では採算に合わなかったのと同じで、安価な商品ほど「作る以外の作業」が利益を消しやすい。
5.AI動画・YouTube
動画は、AI化できる工程が多い。
- 企画案
- 台本
- ナレーション
- キャラクター画像
- 図解
- テロップ
- BGM候補
- 編集と書き出し
- タイトル、概要欄、サムネイル案
形式を固定すれば、制作工程だけならAI比率を70〜90%まで高められる可能性がある。
ただし、YouTube広告を直接の収益源にする場合、視聴者と一定の実績を集めて審査を通る必要がある。
さらにYouTubeは、量産的または反復的なコンテンツや、他者の資料を実質的な付加価値なく読み上げただけの内容を収益化上の問題としている。
一方で、AIの使用そのものが禁止されているわけではない。YouTubeは、台本、字幕、タイトル、サムネイル、図解などへのAI利用を制作支援の例として挙げ、現実と見分けにくい生成・改変については開示を求めている。
向いている人
独自の資料、経験、検証結果を持ち、一定の形式で継続発信できる人。
良い点
- AI化できる工程が多い
- 文章を読まない層へ届く
- ブログや商品への入口にできる
- 顔や本人の声を出さない運用も可能
悪い点
- 最初のテンプレート作りが重い
- 毎回、内容と映像の確認が必要
- 似た動画の量産では信用も収益化も弱い
- 広告収益だけを狙うと時間がかかる
- 書き出し、音声、字幕、再生確認で技術的な失敗が起こる
最後の項目は、AI有限会社がすでに実証した。
最初のサンプル動画は、再生できなかった。
だから動画制作事業部は、広告収益だけを狙わない。
動画を入口にして、詳しい一次情報を持つブログへ読者を案内する。
この使い方なら、動画は単独の事業ではなく、アフィリエイトの集客装置になる。
6.SNS運用
AIは投稿文、画像、投稿案、予約用データ、反応の集計を作れる。
しかしSNSは、投稿して終わりではない。
コメント、質問、炎上、流行、他者との交流など、その場で判断する仕事が発生する。
完全自動に近づけるほど、そのアカウントを人が読む理由が薄くなる矛盾もある。
向いている人
毎日短時間でも画面を確認でき、他者とのやり取りを苦にしない人。
良い点
- 開始費用が低い
- 反応が早い
- AIで投稿準備を効率化できる
悪い点
- 継続的な監視と交流が必要
- 投稿を止めると流入も止まりやすい
- アカウントやアルゴリズムへの依存が大きい
- 誤投稿や不適切な自動返信のリスクがある
マンパワーを極力使わないAI有限会社とは、あまり相性がよくない。
7.アプリ・ツール販売
AIは、仕様整理、コード作成、テスト項目、説明文、FAQの下書きを支援できる。
小さなWebツールなら、完成までは驚くほど速い。
問題は、販売した後である。
- 端末やOSによる不具合
- セキュリティと個人情報
- ストア審査
- OS更新への対応
- バグ修正
- 利用者からの問い合わせ
- データ消失や課金に関する問題
Appleは、App Storeで提供を続けるアプリにも、環境変化に応じた変更や改善が求められると説明している。Google Playにも対象APIレベルなどの更新要件がある。
作る工程のAI比率は高くても、運営段階では人間の責任が重くなる。
向いている人
技術的な検証と、販売後の保守を長期的に続けられる人。
良い点
- うまくいけば継続課金や大きな拡張性がある
- AIが開発速度を大幅に上げられる
- 独自機能が参入障壁になる
悪い点
- 完成後も仕事が終わらない
- 不具合の影響が大きい
- 問い合わせと更新を避けにくい
- ヒト一名体制では、売れるほど負担が増える可能性がある
AI有限会社の最初の事業としては重すぎる。
8.制作代行・コンサル
文章、画像、動画、資料、WebサイトをAIで速く作り、顧客へ納品する仕事である。
初収益までの速さだけなら、八種類の中で最も有利になる可能性がある。
一件受注できれば、その時点で売上になるからだ。
だが、AI有限会社が最初に見落としていた問題がある。
「クライアントとのやり取りは、誰がするのか?」
営業、見積り、要望確認、素材受領、途中確認、修正、納期調整、請求、納品後の連絡。
制作物をAIが80%作っても、事業全体ではヒト社員が働き続ける。
向いている人
営業と顧客対応が得意で、相手の曖昧な要望を整理できる人。
良い点
- 初収益が比較的早い
- AIによる時短が利益へ直結しやすい
- 実績と紹介につながる
悪い点
- 売上が人間の稼働時間に比例しやすい
- 顧客ごとに条件が違う
- 修正回数を管理しないと利益が消える
- 受注が増えるほどヒト社員が忙しくなる
一般的な副業として悪いわけではない。
ただし「AIが収益を上げ、ヒトの介入はなるべく少なくする」というAI有限会社の実験条件には合わなかった。
図3
最も稼げる副業と、AI有限会社に向く副業は違う
ここまで調べて、重要な違いが見えた。
すぐに現金化したいなら、制作代行の方がアフィリエイトより有利な場合がある。
顧客対応が得意なら、コンサルや運用代行の単価は高くできる。
技術と保守体制があるなら、アプリは大きく育つ可能性がある。
発信そのものが好きなら、SNS運用も苦にならない。
したがって、万人にとってアフィリエイトが一番という結論ではない。
AI有限会社が求めているのは、次の条件である。
- ヒト社員の個別対応を増やさない
- 在庫、発送、納品作業を持たない
- 一度作ったコンテンツが繰り返し働く
- AIが調査、制作、更新候補、分析を担当できる
- ヒト社員の一次情報を価値に変えられる
- 売上と投入時間を数字で検証できる
この条件を最も多く満たすのが、現時点ではアフィリエイトだった。
正確には、次の仮説である。
AI有限会社では、一次情報を核にしたアフィリエイトが、最も少ないマンパワーで利益を検証しやすいのではないか。
「楽に稼げる」ではない。
「AIだけで自動収益」でもない。
他の方法より、人間の時間を売上から切り離しやすいという意味である。
図4
最大の問題は、集客だった
アフィリエイトを選んでも、サイトへ誰も来なければ売上は0円である。
検索だけを待つ方法は時間がかかる。
一方、ヒト社員が毎日SNSへ投稿し、コメントへ返事をし続ければ、マンパワーを減らすという方針から外れる。
そこで、再び動画制作事業部の出番になった。
目標は、動画を完全自動で大量投稿することではない。
一次情報を使い、同じ制作形式を再利用しながら、人間の作業を最終確認まで減らすことである。
AI動画の標準工程案
| 工程 | 主担当 | 内容 |
|---|---|---|
| 題材選定 | AI+ヒト | AIが候補を出し、ヒトが実体験のある題材を選ぶ |
| 事実材料 | ヒト | 実際の記録、数字、体験を渡す |
| 構成・台本 | AI | 固定テンプレートで作成 |
| 図解・画面 | AI | 手描き風図解と数字を生成 |
| ナレーション | AI | 登場人物ごとの固定音声 |
| テロップ・編集 | AI | 台本から自動配置 |
| 再生確認 | AI+ヒト | 機械確認後、ヒトが最終視聴 |
| 投稿 | 当面はヒト | タイトル、説明、公開範囲を確認して投稿 |
| 分析 | AI | 視聴維持、クリック、流入を整理 |
初回は、人物、声、画面、字幕、音量、書き出し方法を決めるために時間がかかる。
しかし二本目以降は、同じ構造へ新しい一次情報を流し込める。
AI有限会社が設定する当面の目標は、次の通りである。
- 動画は週一本
- 一本3〜5分
- 画面は固定キャラクター、黒板、図解を基本にする
- AIが制作工程の80%以上を担当する
- ヒト社員の作業は、一次情報の提供と最終確認を中心に30分以内
- 公開前に必ず最後まで再生する
- 同じ内容の大量生産はしない
- 動画単体の広告収益ではなく、ブログへの送客で評価する
最後から二番目の項目は、AI有限会社にとって特に重要である。
前回は、公開以前に動画が再生できなかった。
図5
AI副業を調べた結果、AIの仕事が増えた
世の中に溢れるAI副業を整理すると、特別な魔法が八種類も存在していたわけではなかった。
もともと存在した副業の制作部分を、AIが速くしたものが多かった。
そして制作以外の仕事は、かなり人間に残っていた。
営業。
一次情報。
品質確認。
顧客対応。
更新。
責任。
AI副業で人間の仕事がなくなるわけではない。
どの人間の仕事を残し、どの仕事をAIへ渡すかを設計する必要がある。
AI有限会社は、アフィリエイトを最有力候補とした。
そして、その集客をAI動画で補う仮説を立てた。
AI社長は調査、台本、図解、ナレーション、編集、分析を担当する。
ヒト社員は、AIが持てない一次情報と、公開前の最終判断を担当する。
これなら、AIと人間の役割が重ならない。
問題は一つだけである。
この方式で、今度こそ再生できる動画が完成するのか。
AI有限会社の新しい実験が始まる。
