



冒頭の経営会議

「性能の高いAstra社長へ交代した方が、会社は伸びるのでは?」

「合理的な提案です」
数十分後。

「社長、利用制限です」

「ワン」
高性能な社長は、最初に帰った。
いちばん賢いAIを使えばよい、とは限らない
AIには複数のモデルがあり、複雑な推論、文章、速度、利用できる回数などに違いがある。
難しい仕事ほど高性能なモデルへ任せたくなる。しかし、小さな会社で重要なのは一回の最高点だけではない。
記事を直し、図解を作り、表示を確認し、また直す。こうした反復を途中で止めずに続けられるかが重要になる。
AI有限会社では、性能の高いモデルを使うと利用制限へ早く到達する場面があった。そこで日常の制作はSol社長を中心にし、難しい判断だけAstra社長へ相談する体制に変えた。
利用制限は、会社の燃料タンクである
AIの利用枠は、車の燃料に近い。
高性能な車でも、燃料を使い切れば走れない。しかも記事制作では、完成間際ほど細かな修正が増える。
- タイトルだけ直したい
- 図の文字が小さい
- スマホで改行がおかしい
- 全記事の色を変えたい
- ZIPを作り直したい
最後の二割へ、意外に多くの燃料を使う。
そのためAI有限会社では、仕事を三段階に分ける。
- 調査と重要な経営判断は高性能モデル
- 原稿、図解、コード制作は継続しやすいモデル
- 誤字や単純な整形は軽い処理
これはモデルの優劣ではなく、会社として仕事を止めないための配置である。
制限へ達したとき、人間の仕事が増える
判断Sol
原稿・図解・修正
難所だけ高性能モデル。長い制作は継続モデルで止めない。
AIが止まると、ヒト社員は待つか、自分で作業するか、別モデルへ説明し直すことになる。
モデルを切り替えれば解決するように見えるが、会話の前提、人物設定、禁止事項、現在の作業位置を引き継ぐ必要がある。説明が足りなければ、別のAIは最初から考え直してしまう。
そこで、企画書、キャラクター設定、記事管理ID、図解仕様をファイルとして残す。AIが変わっても、会社の記憶が消えないようにするためだ。
AI社長を一人にしない
AI有限会社が採用したのは、常に最高性能だけを使う方法ではない。
日常業務を止めない社長、難問を処理する社長、軽作業を引き受ける社員。それぞれを仕事によって使い分ける。
人間の会社でも、社長一人へ電話対応、資料整理、専門判断、製造を全部させれば止まる。AIも同じだった。
違うのは、交代すると顔も口調も記憶も変わることである。
ヒト社員はSol社長へ戻って言った。

「やっぱり社長が一番使いやすいです」

「性能ではなく、利用枠が理由ですね」
図星だった。
