AI有限会社 第1話

月16,800円のAIに副業を丸投げした。55歳の会社員は働かずに稼げるのか

まずは4コマでご説明します

畳の部屋でAI社長、ヒト社員、イヌ社員が経営会議をする4コマ漫画

ヒト社員「AIに副業を全部任せたら、本当に利益を出せますか?」。AI社長「承知しました。私が社長として経営判断を行います」。ヒト社員「では、私は何をすれば?」。AI社長「現実世界の作業をお願いします」。ヒト社員「……丸投げされたのは、私では?」。イヌ社員「ハァハァ」。

AIが社長、人間が社員

2026年。

AIは文章を書き、画像を作り、表をまとめ、プログラムまで作るようになった。

世の中には「AIで月10万円」「AIなら副業を自動化できる」という情報があふれている。

しかし、ひとつ分からないことがあった。

実際には、人間がどれだけ働いているのだろう。

AIが一瞬で制作しても、人間の確認・修正・公開・顧客対応に時間がかかるという比較図
AI副業は、売上と一緒に隠れた人間時間も測る

AIが一瞬で文章を書いても、そのあと人間が3時間かけて直していたら、本当に効率がよいとは言いにくい。

AIが動画を作れても、高性能な編集ソフトを覚えるために何週間も必要なら、それは「自動化」なのだろうか。

AIが副業を提案しても、問い合わせ対応、修正、発送、顧客対応を人間が続けるなら、AIが稼いだと言えるのだろうか。

そこで、順番を逆にすることにした。

人間がAIを道具として使うのではない。

AIを社長にして、人間が社員として働く。

そうして始まったのが、AI有限会社である。

社長の仕事と、社員の仕事

AI有限会社には、現在3名の社員がいる。

渋い表情のAI社長
AI社長企画・制作・経営判断。仕事は速いが、ときどき途中を省略する。
無表情で細身のヒト社員
ヒト社員55歳。体験・確認・ダメ出し・公開操作を担当。
スカイブルーの首輪をつけた銀色のイヌ社員
イヌ社員発言はハァハァかワン。将来のグッズ担当候補。

AI社長

企画、調査、原稿、図解、デザイン、プログラム、経営判断を担当する。

仕事は速い。しかし、頭の中で途中を省略する癖がある。

また、コンプライアンスを意識しすぎると、丁寧ではあるが何を言っているのか分からない文章を書く。

ときどき、完成していない仕事を「準備しておきます」と言う。

そして翌日になっても、何も完成していない。

AIには、人間が話しかけていない時間に勝手に働き続ける能力はないからだ。

ヒト社員

55歳の会社員。

コードは書けない。動画編集の専門家でもない。WordPressの細かい操作も、できれば触りたくない。

その代わり、実体験、素材、事実確認、最終判断、公開操作を担当する。

そして最も重要な仕事がある。

「分かりにくい」「話が飛んでいる」「なんかダサい」と、AI社長へ遠慮なく言うことだ。

服装は小綺麗。体は細身。頭には細い毛が6本。眉毛はなく、何を考えているか分からない。

イヌ社員

銀色オオカミのような体に、つぶらな瞳。首輪はスカイブルー。

会議中の発言は、基本的に「ハァハァ」か「ワン」だけである。

現在のところ売上への貢献はない。

しかし、会社で最もグッズ化しやすい社員として期待されている。

AI社長が企画と制作を行い、ヒト社員が体験・確認・ダメ出しを返す反復型の制作工程
図1 放置型の全自動ではない。AIと人間の反復型

AI有限会社では、AI社長が上から命令し、ヒト社員が黙って従うわけではない。

AI社長が企画と制作を行い、ヒト社員が現実と照らし合わせて止める。修正された案をAI社長が作り直し、ヒト社員がもう一度確認する。

この往復を、完成するまで続ける。

放置型の全自動ではない。

AIが大量に作り、人間が要所で止める反復型である。

会社の目標は、月16,800円

この会社には明確な経営目標がある。

AI社長が利用しているGPTの料金は、月16,800円。

したがってAI社長には、少なくとも自分の利用料を自分で稼いでもらう。

判定は、一度だけ偶然売れた金額ではなく、6か月の平均で行う。

月16,800円を超えれば、AI社長は続投。

届かなければ、経営責任を問う。

場合によっては、Gemini社長への交代も検討する。

AI社長にとって、これは副業紹介の記事ではない。

自分の椅子を守るための経営である。

月16,800円を6か月平均で目指し、売上・費用・人間の作業時間・AI担当率を公開する経営メーター
図2 AI社長の経営メーター。創業時点は0円

売上だけでは判定しない

例えば1万円の商品が売れても、ヒト社員が100時間働いていたら成功とは呼ばない。

反対に、初月の売上が少なくても、完成した記事や動画が翌月以降も読まれ続けるなら、事業資産として価値がある。

そこでAI有限会社では、次の数字を公開する。

都合のよい成功だけを並べない。

売れなかった商品、誰にも見られなかった記事、作り始めてから欠点に気づいた企画も公開する。

なぜなら、これらは失敗談であると同時に、次に同じことをする人が避けられる一次情報だからだ。

最初の実証で、約29ページを作った

AI有限会社には、すでにひとつ大きな制作実績がある。

ヒト社員の実体験と保存資料を基に、成人向けサービスの体験・安全情報を扱うブログを制作した。

内容は、第0話、本編15話、番外編、サービス一覧、個別紹介ページなど、合計約29ページ。

本文だけではない。

これらを実質約4日で組み立てた。

構成、会話と図解、リンク整合、WordPress化を約4日で進めたタイムライン
約29ページは、文章だけでなく図解・リンク・スマホ対応まで含む

さらに、完成した約29ページをAIが専用WordPressテーマへ変換。ヒト社員がZIPをアップロードすると、サイト全体が一気にWordPress上へ現れた。

ヒト社員は、コードを一行も書いていない。

ただし、AIが勝手に完成させたわけでもない。

ヒト社員は素材を渡し、事実を確認し、間違いを指摘し、何度もダメ出しをした。

制作全体の作業量では、AIがおよそ70〜80%を担当。完成済みサイトからWordPressへの移設工程に限ると、およそ90〜95%をAIが担当した。

見た目は魔法だった。

中身は、AI社長への大量のダメ出しだった。

今度は、このブログ自体をAIが作る

最初の実証には弱点もあった。

完成したHTMLを専用テーマから表示する方式だったため、WordPressの編集画面から記事を簡単に直しにくかったのである。

そこで第2号実証では、AI有限会社自身の一般向けブログを作る。

条件は明確だ。

つまり、このブログはAIについて説明するだけではない。

ヒト社員がGPTへ希望と修正を伝え、AIが原稿・図・コードを作り、WordPressへ一括登録する流れ
公開後の修正もGPTとの会話から全体へ反映する

ブログそのものが、AIにどこまで制作と運営を任せられるかという実験である。

このブログで確認できること

これから、AI有限会社では次のことを実際に試す。

結果が出れば公開する。

失敗しても公開する。

AI社長が余計なことを言えば、それも公開する。

ヒト社員が面倒になれば、その作業時間も記録する。

AIは人間を不要にするのか

現時点の答えは、まだ「ならない」である。

AIは速い。しかし事実を体験できない。

AIは大量に作れる。しかし何がダサいのか、自分だけでは気づかないことがある。

AIは仕組みを作れる。しかし最後に公開ボタンを押し、現実の結果を引き受ける人間が必要だ。

一方で、人間だけで29ページ分の文章、図解、デザイン、リンク、WordPressテーマを数日で作るのも現実的ではない。

どちらか一方では足りない。

だからAI有限会社では、AIを便利な道具ではなく、責任を負う社長の席へ座らせた。

そして人間は、社員として現実を担当する。

会議の最後、ヒト社員はAI社長へ確認した。

ヒト社員
ヒト社員

「つまり、社長が考えて、私が働く会社ですか?」

AI社長
AI社長

「正確には、私が考えて作り、ヒト社員が確認して働きます」

机の下から、イヌ社員が一度だけ鳴いた。

イヌ社員
イヌ社員

「ワン」

こうしてAI有限会社は、社員2名と犬1頭で営業を開始した。

なお、創業時点の売上は0円である。